『私がオバさんになったよ』

『私がオバさんになったよ』

なかなかドキッとさせられるタイトルのこちらの書籍。
作詞家のジェーン・スーさん(ラジオパーソナリティーでもあり、コラムニストでもある)の対談集なのだけれど、半年ほど前に兄からLINEが届き「面白いから読んでみたら?」と勧められたのがこの本でした。

はじめにお伝えしておくと、兄と私は日常的に本を薦め合うような関係性ではありません。定かではないけれど、普段読んでいる本のジャンルは私とは全然ちがうし、そもそも連絡を取り合うのも本当にごくたまにのこと。過去に何度かは「これ良かったよ」と、本を薦めたり、薦められたりしたことがあったような気もするけれど、それもお盆やお正月に顔を合わせたときに、その場の会話の流れで出た言葉だったはず。

そんななか、このLINEが届いたのです。
ナルホド。ふむふむ。兄はこの本を読み、このタイトルを見て、私の顔が頭に浮かんだのか……と思うと、ちょっと笑ってしまいました。

本の内容はというと、ジェーン・スーさんが過去に対談した人の中から、もう一度会って話したいと思った人と再対談したときの内容をまとめたもの。お相手は、光浦靖子さん、山内マリコさん、中野信子さん、田中俊之さん、海野つなみさん、宇多丸さん、酒井順子さん、能町みね子さん。ところどころピンとこない部分はあり、共感一辺倒ではないものの興味深い話しがたくさんあって、とても面白い本でした。

詳しい内容や感想は割愛させていただきますが、印象的だったのは書籍タイトルについて触れていたまえがきの一文。

本のタイトルは犬笛のようなものだと思う。届いてほしい人にしか聞こえない周波数のようなものがあるのだ。(中略)そこにうまくチューニングできれば、読み手をがっかりさせることも少なくできると信じている。
『私がオバさんになったよ』と言われると、少しだけ心がざわつく人に届いて欲しい。

著者:ジェーン・スー 出版社: 幻冬舎  発売日: 2021-08-05.

“届いてほしい人にしか聞こえない周波数”という例えが、やけにしっくりきて納得してしまいました。

そういえば、少し前にNetflixで配信していた『39歳』というドラマタイトルの周波数は見事にキャッチしたし(39歳じゃないけれど)、20代後半の頃は『29歳のクリスマス』という昔のドラマがやけに気になって、再放送だったか、動画配信だったか……何かで視聴したような記憶も。

もう『29歳のクリスマス』に心がざわつくことはないし、きっと10年後、20年後には『私がオバさんになったよ』が発する周波数も私には届かなくなっているはず。そう考えるとざわつく今の自分がちょっと可愛くもあり、感慨深くもあり、その一方で10年後、20年後の私はどんな周波数をキャッチするようになっているのか、ちょっと楽しみに思うのです。

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